第一話 - 【1】
【1】
5年後の自分、10年後の自分がどうなっているかなんて想像できている人がどのくらいいるんだろう。
明日の自分の未来すらわからないのに……そう、早い話、1分、1秒後の事すら見えないのが人生なんだって思う。
そんな事を考えているのは私だけかもしれないけど……それが今の私。新谷梓、25才。
自分の未来に何のビジョンも見えていない……そう、あんな事が私の未来に待ち構えているなんて、想像すらできなかった。
去年の夏の終わり頃、私は1年7ヶ月付き合っている長瀬ハルから、カレの工房でプローポーズされた。
なんともハルらしいプロポーズだった。
ハルはガラスのウェルカムボードを私に差し出して、耳まで真っ赤になってうつむいてこう言った。
「これに一緒に名前を並べられたらうれしいんだけど」
ハルの長いまつ毛が震えていて、ここで私が「NO」って言ったらハルはどうなっちゃうんだろう? って不安になって、思わず「うん。私も……うれしい」って返事をしてしまった。そう言ってから、なんだか取り返しのつかないこと言ったような気がしていた……。
プロポーズなんて25年生きてきて初めての事だったから、羽がはえて飛んで行きそうになるくらい嬉しくて、ドキドキして震えて声なんか出なくなって、何も考えずにただうなずくだけだと思ってたのに、こんな気持ちで返事するなんて……。
これって、私の人生変えるくらいの出来事のはずなのに。
そんな私の不安な気持ちに気づくはずもなく、ハルは私をギュッと抱きしめて長いキスをした。
ハルとの長いキスの間中、こんなものなのかな、リアルなプロポーズって。想像していたのと違う……けど、きっとみんなそうなんだ、って考えてた。
「みんなそうなんだ」って言葉は安心する魔法の言葉だけど、その言葉で安心している自分が嫌い。
















